手当について 「咳止めシール」は咳止めではありません

どうして咳が出るのか?

咳はのど、気管支、肺などの気道に入ってきたほこり、煙、カゼのウイルス等を追いだすために出ます。また、炎症を起こして気管支にたまった痰を出すためにも出ます。ですからこれは生体の正常な防御反応なので、むやみに抑えない方がよいのです。強力に抑えてしまうと、ウイルスは中にこもったままになるし、たまった痰も出てきません。むしろ病気が長引く可能性もあります。

「咳止めシール」と誤って呼ばれている薬は、ツロブテロール貼付薬(商品名はホクナリンテープ等)というテープ状の薬です。これは元々は気管支ぜん息の治療薬として開発された薬です。テープに含まれるツブテロールという成分が皮膚から吸収して、気管支に作用し気管支を拡張させます。それによって気管支ぜん息の発作で細くなった気管支を広げて、息が通りやすくなったり痰が出やすくなったりすることで、呼吸が楽になります。咳を止めようとする作用は持っていません。薬の分類上は「気管支拡張剤」という部類に入ります。気管支ぜん息や急性気管支炎など、気管が狭くなっている病気に効果を発揮します。ですからウイルスを追いだそうとするカゼの咳には効くことはありません。

この薬には副反応もあります。気管支に作用する以外に心臓やほかの臓器にも働くため、動悸がしたり手が震えたりすることがあります。一番注意してほしいのは、この薬と同じ成分の薬で剤形がシロップ、粉、錠剤のものがあることです。よくあるのが、既に気管支拡張剤が入っている飲み薬を処方されて飲んでいたのに、咳がひどいので家に残っていたシールを貼ってしまった、というのです。そうすると必要の2倍の量の薬が体に入ってしまうことになり、副作用が全面に出てしまいます。脈がすごく速くなったり、顔面が蒼白になったり、吐いたり、筋力が低下することがあります。

薬を自分の判断で止めたり追加することは危険なこともありますので、十分気をつけてください。

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