おたふくかぜをあまく見ないでームンプス難聴について

おたふくかぜはムンプスウイルスに感染して耳下腺が腫れる病気です。発熱し、両方あるいは片方の耳下腺が腫れますが、通常1週間から10日ぐらいで治ります。ほとんどの人が合併症なくよくなります。

しかしいくつかの合併症があります。ウイルスが脳に炎症を起こす髄膜炎や膵炎、副睾丸炎などがあります。

今回は最近問題となっているおたふくかぜ後の難聴、ムンプス難聴についてお話します。この難聴は、以前はおたふくかぜに罹った人の1万から2万人に一人くらいの稀なものとされていましたが、最近の調査では3500人に一人くらいとも言われています。難聴はおたふくかぜに罹って7日以内に発症することがほとんどで、片方の耳だけが難聴になることが多いのです。ですから子どもの場合気がつかないで大人になってわかることもあります。子どもの耳元で指をすり合わせて音が聞こえているかを調べる「指すり法」で確認することをお勧めします。

実際に難聴になってしまうと有効な治療法はないというのが現状です。おたふくかぜの予防接種を受けて、おたふくかぜにかからないようにすることが唯一のムンプス難聴の予防策と言えます。

「咳止めシール」は咳止めではありません

どうして咳が出るのか?

咳はのど、気管支、肺などの気道に入ってきたほこり、煙、カゼのウイルス等を追いだすために出ます。また、炎症を起こして気管支にたまった痰を出すためにも出ます。ですからこれは生体の正常な防御反応なので、むやみに抑えない方がよいのです。強力に抑えてしまうと、ウイルスは中にこもったままになるし、たまった痰も出てきません。むしろ病気が長引く可能性もあります。

「咳止めシール」と誤って呼ばれている薬は、ツロブテロール貼付薬(商品名はホクナリンテープ等)というテープ状の薬です。これは元々は気管支ぜん息の治療薬として開発された薬です。テープに含まれるツブテロールという成分が皮膚から吸収して、気管支に作用し気管支を拡張させます。それによって気管支ぜん息の発作で細くなった気管支を広げて、息が通りやすくなったり痰が出やすくなったりすることで、呼吸が楽になります。咳を止めようとする作用は持っていません。薬の分類上は「気管支拡張剤」という部類に入ります。気管支ぜん息や急性気管支炎など、気管が狭くなっている病気に効果を発揮します。ですからウイルスを追いだそうとするカゼの咳には効くことはありません。

この薬には副反応もあります。気管支に作用する以外に心臓やほかの臓器にも働くため、動悸がしたり手が震えたりすることがあります。一番注意してほしいのは、この薬と同じ成分の薬で剤形がシロップ、粉、錠剤のものがあることです。よくあるのが、既に気管支拡張剤が入っている飲み薬を処方されて飲んでいたのに、咳がひどいので家に残っていたシールを貼ってしまった、というのです。そうすると必要の2倍の量の薬が体に入ってしまうことになり、副作用が全面に出てしまいます。脈がすごく速くなったり、顔面が蒼白になったり、吐いたり、筋力が低下することがあります。

薬を自分の判断で止めたり追加することは危険なこともありますので、十分気をつけてください。

HEART(H26年2月号):先天性風しん症候群

医療情報誌ハートは、郡山市・須賀川市・本宮市の読売新聞福島民友に折り込まれています。

当院から医療のQ&Aを寄稿しています。

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26年2月号

子どもの咳にははちみつが有効

honey子どもの咳はやっかいで、夜眠れなくなったり不機嫌になります。
アメリカの研究で、はちみつを飲ませた群、咳止めのシロップを飲ませた群、なにも飲ませなかった群で比較したところ、はちみつ群がほかの群と比べて、夜の咳が軽くなり眠れる子が多かった。
咳止めシロップ群と何も飲まなかった群はほとんど変わらなかったとのこと。咳止めの薬は意味がないかも。はちみつを試してみてもいいかも知れません。

ただし、1歳未満のお子さんにはボツリヌス中毒の危険があり飲ませることはできません。

 

 

HEART(H25年10月号):RSウイルス感染症

医療情報誌ハートは、郡山市・須賀川市・本宮市の読売新聞福島民友に折り込まれています。

当院から医療のQ&Aを寄稿しています。

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25年10月号